【紅緒】
「…………」
【紅緒】
「……とぅっ!」
中庭を覗くと……やはり一ツ橋紅緒は、たった一人で剣の稽古をしていた。
もはや部活というよりは自主練といったところだろう。
アリカお嬢さまが気にかけるのもわかる、やや寂しげな風景だ。
しかし――。
【紅緒】
「せいっ……! やぁっ……!」
【創】
「…………」
一ツ橋紅緒の剣は、それは見事なものだった。
振る、払う、そして素早い足運び……ひとつひとつの動作にキレがある。
びしっと止まって、また流れだす、技から技への繋がりが見ていてとても心地いい。
なによりも――その身に纏っている凛とした気が充実していて美しかった。
普段の身ごなしからもある程度は察していたが、本当にかなりの腕前の剣士だと思う。
下手な実力の男では、為す術もなく一瞬で叩きのめされてしまいそうだ。