【銀子】
「――で、話というのはなんだい?」

【銀子】
「わざわざこんな場所を選ぶくらいだから、残念ながらあまり色気のある話ではなさそうだが」

【りおん】
「ええ……わたしね、前からあなたに言いたかったことがあるの」

【りおん】
「人の目があるところで、はっきり伝えておこうと思って」

【銀子】
「やれやれ、色気がないどころか、かなり厳しそうな話だね?」

【銀子】
「いいだろう、心して拝聴しよう」

やや芝居がかった仕草で、皇坂銀子が肩をすくめてみせる。

【りおん】
「それよ」

【銀子】
「うん?」

【りおん】
「あなたのそういうところがイヤなの、わたし」

――清城りおんの声は、決して大きなものではなかったが。
中庭という場所なこともあり、距離のある俺の耳でもはっきりと聞き取れた。