【轟子】
「はい、お願いします、来栖川様!」
【亜寿沙】
「頼りっぱなしですみません……」
【創】
「構いませんよ。人に教えることで、自分の復習にもなりますから」
実際、俺も余裕綽々と言えるほどの状況ではない。
もともと座学には自信があるほうだが――それでも鳳鐘の授業は総じてレベルが高い、というのが正直な感想だった。
一度、学生としてひととおりの勉強をした今だから、さほど問題なくこなせているものの。
ただの新入生として入っていたら、細川轟子や畠山亜寿沙のように、勉強に苦戦していたかもしれない。
【創】
「ああ、このケースは……」
【創】
「きちんと理解するために、すこし手前からおさらいしたほうがよさそうですね」
【轟子】
「おうふ……」
【亜寿沙】
「よ、よろしくお願いします!」
【義春】
「わたくしも拝聴させていただいてよろしいでしょうか」
【創】
「ええ……」
――教科書を囲むようにしながら、ひとつひとつ、考え方を説明していく。
【アリカ】
「…………」
そんな俺たちの様子を、アリカお嬢さまは楽しそうに見つめていた。
一緒になって自分も勉強しよう、という素振りはまるでない。
さっきまで本のページをぱらぱらめくっていたが、タイトルを見たら参考書とかそういう類ではない、ただの娯楽小説だった。