▼オンマウスで差分が切り替わります▼


【轟子】
「はい、お願いします、来栖川様!」

【亜寿沙】
「頼りっぱなしですみません……」

【創】
「構いませんよ。人に教えることで、自分の復習にもなりますから」

実際、俺も余裕綽々と言えるほどの状況ではない。
もともと座学には自信があるほうだが――それでも鳳鐘の授業は総じてレベルが高い、というのが正直な感想だった。
一度、学生としてひととおりの勉強をした今だから、さほど問題なくこなせているものの。
ただの新入生として入っていたら、細川轟子や畠山亜寿沙のように、勉強に苦戦していたかもしれない。

【創】
「ああ、このケースは……」

【創】
「きちんと理解するために、すこし手前からおさらいしたほうがよさそうですね」

【轟子】
「おうふ……」

【亜寿沙】
「よ、よろしくお願いします!」

【義春】
「わたくしも拝聴させていただいてよろしいでしょうか」

【創】
「ええ……」

――教科書を囲むようにしながら、ひとつひとつ、考え方を説明していく。

【アリカ】
「…………」

そんな俺たちの様子を、アリカお嬢さまは楽しそうに見つめていた。
一緒になって自分も勉強しよう、という素振りはまるでない。
さっきまで本のページをぱらぱらめくっていたが、タイトルを見たら参考書とかそういう類ではない、ただの娯楽小説だった。