【創】
「お茶のセットは――洋風をご希望ですね、かしこまりました、お嬢さま」

【創】
「すぐに淹れてまいります。どうぞ、ごゆるりとおくつろぎください」

オーダーを聞き、深々とお辞儀をしてから、お茶の支度をする。
ティーカップを棚から取りだす、ティーポットに湯を沸かす……。
そんなどうということのないあたりまえの所作も、ややもったいをつけてオーバーアクション気味に行う。

俺の仕草のひとつひとつに客の視線が集まっていて、すこし間を作ると、ほぅ、という感嘆したような、しっとりしたため息が漏れた。
なんだかスポットライトを浴びる舞台役者にでもなったような気分だ。

【創】
「…………」

注目の中でパフォーマンスすること自体は、べつに嫌いではない。

【客の女の子A】
「……美しい……なんて美しい、流れるような仕草なの……」

【客の女の子B】
「本当に……ひとつひとつの動きに女性らしいエレガントさがありますわ……」

【客の女の子C】
「あぁ……! ぼうっと見とれてしまいますわね……素敵……」

……さすがに、ここまで褒めそやされると、若干こそばゆいのも事実だが。
しかし、そういう評価のひとつひとつを積み重ねていった先に、最優秀学生の称号もあるはずだった。
とにかく今は、たとえ傍目にはばかばかしかったとしても、この特異な世界で支持される人物像を演じきらなければならない。