【銀子】
「では……踊ってもらえるか?」
【創】
「――――」
それが、ペアダンスを踊ってほしい、ということだと理解するのに、一瞬の間が必要だった。
こちらに向かって、やや躊躇いがちに差しだされた手……つまり。
俺が男役、皇坂銀子が女役でのダンス、ということだ。
実際に相手がいる状態でステップを踏むわけだから、これは今までの練習の総決算とも言える。
【創】
「……喜んで」
俺は、最大限の恭しさをもって、おしいただくように皇坂銀子の手をとった。
【銀子】
「…………!」
教わった技術すべてを投入して、俺は皇坂銀子をリードした。
手をとり、腰を抱きよせ、呼吸を合わせてステップを踏む。
音楽はなく、手を叩く人もいないから、自分たちの刻む足音がリズムの頼りだ。
【銀子】
「……ふふ、ふふふふっ…………!」
いつもの、絶対王者らしい表情とは違う――年相応の少女らしい顔で、皇坂銀子は踊っていた。
屈託のない、心の底から楽しそうな笑顔。