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【赤穂】
「来栖川……さん……?」

【創】
「はい。大丈夫ですか?」

【赤穂】
「…………」

明るくなった教室内を、藤原赤穂はまだおそるおそるという感じで、ゆっくりと見まわした。

【赤穂】
「夢じゃ、ない……?」

【創】
「夢ではありません、現実ですよ。ほら――」

俺は藤原赤穂の手をとって、自分の頬を触らせた。

【赤穂】
「……あったかい……」

【創】
「ね?」

うなずいて微笑み、俺は藤原赤穂の肩に腕をまわして抱きしめた。
怖い夢を見たと泣く子には、まず人肌の感触をやさしく与えなさい――。
俺が自分の母から学んだ、数少ない教えのひとつだ。

【赤穂】
「う、うあぁぁぁぁぁぁぁ…………!」

【赤穂】
「怖かった…………怖かった…………!」

気がゆるんで、ふたたび感情が抑えられなくなったのか。
藤原赤穂は、俺にしがみつくようにして、ひたすらに泣きじゃくった……。